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空想癖人のわや日記

日々の日常、小さなオツムで思うこと。

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2025/Jan
Monday
06:01:57 Comment(-)
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さまうぉ文。

相変わらずSW熱の勢いは収まらず。
小説書いてみたいなんて思ったりで。
…載せてみたりなんかして…。

カズケン文です。初文です。
妹ちゃんが産まれたお話。
もしよろしかったら下からどうぞ。

≪ムショウノアイ≫


ひとつの命の灯が消えたあの夏の終わり、新たな命の火が灯る。
小さな小さな命が―――。


手を無機質なガラスにそっと添える。
ひんやりとした感覚は火照った掌に心地よい。
少年は熱い眼差しでそのガラス越しを見詰める。
視線の先には小さな小さな――掛替えのない、彼の大切な家族。
「…小さいね」
隣から聞えた呟きに、少年はゆっくりと頷く。
頭ひとつ高いその青年もまた、少年にとっては特別な存在。
「健二さん…」
自分の口から出た言葉に、相手が視線を向けたことがわかったが、そこから繋がる言葉は何も無く、無意識であったのだと気付く。
相手にもそれがわかったのか、こちらに向いていた視線が消え、再び二人の視線がガラスの向こうに集まる。
この沈黙の時間も少年にとっては心地よいものだった。
そして今、傍にいてくれることが何よりも心強い。
「…健二さん」
今度は意識して口にした呼び掛けに、健二は視線ではなく言葉で返す。
「…なぁに、佳主馬くん」
自分の名を呼ぶその声は、少年にとってとても安心出来るもののひとつ。
しかし、その声色に違和感を感じ、隣へと視線を移す。
「――――」
視線を真っ直ぐガラス越しに向けていた健二のその瞳からは、今にも溢れそうな涙があった。
それを見た瞬間、鼻の奥がつんと痛み、目頭が一気に熱くなる。
じんわりと広かる感情に、あ、と思ったときには頬をその熱が伝う。
ゆっくりと佳主馬に視線を向けた健二は優しく微笑む、と同時に、その瞳からほろりと涙が零れ落ちた。
お互いに涙を拭うこともなく、見詰め合う。
涙を見られたことに恥かしさはあったが、それよりも大きな安心感が心を満たす。
へらりと笑う健二に今度は胸の奥が疼いた。
「…僕、健二さんにはカッコ悪いとこばっかり見せてる」
そして小さく苦笑する。
基本的に感情を顔に出さない。泣くことなどほとんど無くなっていたはずなのに、あの夏から――この小磯健二と言う人間の前では、たくさんの自分を見せている。
まるで自分の中にある喜怒哀楽の感情を凝縮したように。あのたった数日で。
もちろんそれだけの事件ではあったのだが、それは自分自身にとっても新しい自分の発見でもあったのだ。
「そんなことない。佳主馬くんはカッコイイよ。とっても」
いつもなら自分の評価なんて気にも留めないのに、健二の言葉ひとつがこんなにも嬉しい。
「それに――佳主馬くんの涙ってとっても綺麗だ」
「――っ」
またへらりと笑う健二は再び視線を戻す。
ほんのりと顔を赤くしている自分に気付くこともなく、かわいいね、と呟いている。
顔の熱を意識しながら佳主馬も視線を産まれたばかりの家族に戻す。
涙はもうすっかり乾いていた。
眠っている妹が大きく口を開けた仕草に自然と微笑む。
不意に――守りたい、と強く思う。
あの夏よりも、もっともっと強く。
義務感でもなく、正義感でもない。ただ純粋に込み上がる気持ち。
これが無償の愛と言うものだろうか、といつだったか国語の教科書に載っていた言葉を思い出す。
しかしそれが何であろうと、どんな名であろうと、自分にとっては「守りたいから守る」、ただそれだけ。
ちらりと隣を覗き見ると、相変わらず涙を浮かべた年上の青年が優しく微笑んでいる。
それが自分の妹であることが少し気恥ずかしい。
兄である自分よりも感動しているのではないかと思うし、事実そうかもしれない。
そんな健二の横顔に妹と同じ、先程の決意が甦る。
―――守りたい。
同じ決意、けれど明らかに違う感情。
「…これも無償の愛…?」
「え?」
カチリと合わさった視線に、佳主馬はうろたえる。
「佳主馬くん今何か言った?」
のほほんとしたその表情に、何でもない、と答えて誤魔化すように言葉を乗せる。
「――そろそろ師匠たちが来るんじゃない。行こうよ」
踵を返しながら、健二の指を掴み、歩き出す。
「わ、ちょ、ちょっと待ってよ、佳主馬くんっ」
「心配しなくてもいつでも見れるよ」
「あ、う、うん」
年下の少年に指を掴まれながら、離すこともなく付いて来る年上の青年。
指先から伝わるぬくもりに、胸の奥が再び疼く。
この予感は何だろう。
――離したくない。
そう思うのは何故だろう。
――傍にいてほしい。
そう願うのは何故だろう。
自分よりも白く、体温の低い、少し大きい手を引きながら考える。
けれど――本当は、その答に気付いている。
その感情の名前に気付いている。
ただ今は、気付かないフリをしているだけ。
ただ今は、何度も自分自身に問い掛けるだけ。
予感を確信にするために――。
「午後になったら触れるよ」
「え!本当!あ、でも大丈夫かなぁ…」
「何の心配?大丈夫だよ、赤ん坊って意外に丈夫だから」
「そうなの?」
「そうなの」
今はまだ、気付かないフリ。
そう、この目線の差が縮まるまで。
この手が掴んでいる手を包み込めるようになるまで。
もう少し。
もう少し。


END




えー…何故健二が病院にいるのかとかは疑問に思ってはなりません。
勢い小説ですので。
姪が産まれた時を思い出しながらの文。
うるうるのところにお義兄さんの涙で一気に零れた。そんな記憶を思い出しながら。
弱いんです…そんなもらい泣きの話。
聖美さんはどこで出産だろうか。とりあえず、実家だよな。

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2010/Nov
Friday
22:18:53 Comment(0)
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