SW本7冊目、以下詳しい情報です。
◆「大嫌いな、恋」⇒P36 A5 ¥400 です。
カズケン小説本。
パロでエロで池沢氏が健二さん大嫌いな設定から始まり、徐々に恋愛に発展していく感じです。(その間に酔った勢いでエロありますが)
あの『奇跡の夏』は関係ありませんので、二人は大学内で出逢います。
池沢氏視点のお話で、怯える健二さんに苛立ちますが自覚した後は激甘になります…。
実は年齢が4才差ではないです。20×22で触れてはいませんが気になる方はご注意下さいませ。
そんな感じの7冊目は初、エロ小説です。
※こちらはR指定な本のため、18歳未満の方はご遠慮願います。
※お求めの際は自宅通販のみにてお願い致します。
(休止している本館の(プロフィールにある「パズル」から入れます)「活動部屋」から通販方法&メール等がございます。
◆大嫌いな、恋◆
「俺、来週日本に帰国だから」
その言葉に、ビール片手に気だるそうにもう一人の住人が振り返る。
「あ?来週って…来月じゃなかったか?」
「その来週が四月でしょ。もうボケたの」
勘弁してよ、と息を付けば、この国で唯一の保護者でもある陣内侘助は眉を寄せた。
「清々するな、クソガキめ」
「そのまま返すよ」
仕事用のパソコンと向き合ったまま、佳主馬は淡々と返す。
この国―――この自由な国アメリカに来てから丁度一年が経った。元々こちらを拠点とし、長年住んでいた侘助からの誘いがあったのは、高校三年になったばかりの時。OZのシステム研究を主に管理セキュリティ、サイバーテロ対策本部の技術員としてもプログラミング関係を扱っているこの風来坊の親戚に技術面を買われ、人手不足という理由から『短期でいい』と誘われた仕事だった。
初めは大学に進学するつもりだったため断ったが興味があったのは事実で、結局渋る両親を何とか説得し、『侘助と一緒』という条件で一年間だけ住み慣れた土地を離れたのだった。
もちろん報酬が目当てではない。元より佳主馬は普通の高校生活では想定も出来ないほど自らで稼いでいた。世界共通のOZにより、現在では誰もが知る有名なアバター、キング・カズマを操る者として、中学から本格的に活躍しているのだ。そして大学に入ったら更に事業の拡大を計画していたのだが、それを先延ばしにして今に至る。
「日本か…」
侘助が零した言葉に、佳主馬は何気なくキーボードの手を止め振り返る。どこか懐かしそうに見えるその横顔が、何に想いを馳せ、誰を想っているのか、わかるような気がした。
しかし再度ビールを口に運び飲み終えた侘助の顔は、いつもの気だるい色を含ませて、思い出したように、あ、と声を上げる。
「なに」
「お前さ、大学行って誰か目ぼしいヤツ見付けたら俺に教えろよ」
「は?」
「お前なら有能な人材発掘できんだろ」
「…いないと思うけど」
「わかってるよ。けどまぁ一応、頭の隅にでも留めといてくれよ」
長けた能力と知識は重要だが、機密情報に携わるこの仕事は何より第一に信頼と信用で成り立っている。自分たちはお互い小言を言い合うものの、それだけは疑いなく示す侘助に、佳主馬は小さく笑い、了解、と再びパソコンへ向き合う。
「それ、後は任せるからな。俺徹夜だったしもう寝るわ」
「ごゆっくり」
欠伸をしながら部屋を出て行く音を耳に、佳主馬は再度手を止めカレンダーを眺める。
連絡は取ってはいるものの、大学受験のために数日間だけ帰国した際に会った年の離れた妹に充分に構ってやれなかった。大学生活となる拠点は独り暮らしだが、それでも今よりは自由な時間は増えるだろう。
帰るべき愛しい地へと想いを馳せながら、佳主馬は口元を温めた。
春風に乗って桜の花びらがひらひらと舞う中、佳主馬はその向こうの澄んだ青空を眺める。
新生活へ向けての準備もこれから広げる事業の下準備も順調に進み、一年遅れの大学入学となったが、新たな期待に一つ息を吐き、歩き出す。
「うわ…」
不意に吹いた強い風に目を細めると、離れた場所から聞えた声へと何気なく視線を向ける。
向こうから慌てて掻けて来る学生に目を留めたが、それよりも丁度目の前を舞っている用紙を二枚捕まえた。先程の風に飛ばされたのだろうと予想がつき、手にした用紙を何気なく見下ろす。
捕まえた用紙はルーズリーフで、その規定の線に沿わずにクセのある強い筆圧で無造作に書き殴った数字や文字がそこには散らばっていた。
「す、すみませんっ、それ、僕のですっ」
肩で息をする学生に、佳主馬は視線を移す。目の前まで走ってきた学生は自分とは正反対で、その肌は不健康そうに白く、ひょろりとしたその体付きはヘタをすればそこらへんの女性よりも細かった。
ふと、ちゃんと食事は取れているのだろうかと思って、直ぐにどうでもいいとその思考を打ち消す。
「あ、ありがとうございます」
「いえ」
気弱そうに眉を下げ手渡された用紙を受け取り小さく頭を下げる青年に、ケンジ、と離れた所から友人らしき学生が声を掛けた。そして再度頭を下げて来た道を再び駆けて行く青年を何気なく見送り、佳主馬は踵を返す。
しかし先程見たルーズリーフが気に掛かる。あれは明らかに高度な数式暗号の類のもので、似たようなものを何度か侘助のデータで目にしたことがあった。
「…一応、覚えておくか」
そして再び吹いた強い風に押されながら、佳主馬はゆっくりと歩き出した。
***
「お疲れモードですか~池沢先生」
振り返ると、よっ、と片手を上げた佐久間が立っていた。
「…なに、その『先生』って」
「さぁ」
そんなこと言ったっけ、という顔で首を傾ける視線が佳主馬を通り過ぎる。
「お。健二じゃん」
親友の存在に気付いた佐久間はその姿に、困ってる困ってる、とケタケタと笑った。
佳主馬も再び視線を追うようにその当人へと移す。
「……佐久間先輩はさ」
「ん~?」
眉を下げている健二の姿に一つ息を付き、
「よくあの人と一緒にいれるよね」
嫌そうに話す佳主馬に佐久間は目を見開く。
「おーい、おいおい後輩くん。それをゆーかな、この俺に」
しかし佐久間は全く気にも留めず再びケタケタと笑った。言葉にしたことこそなかったが、佐久間は自分のこの不快感には気付いているのだ。
そして再度親友へと視線を向け、でもさ、と言葉を紡ぐ。
「気弱そーに見えて、あいつ、ケッコー頑固だぜ」
いや実際気弱いけど、と続けてケラケラと笑う。
佳主馬は今も尚、眉を下げている小磯健二を訝しげに眺める。その姿からは『頑固』と言う言葉は随分と懸け離れているように思えた。
「…頑固ねぇ…」
呟いた自分の横顔を、佐久間が興味深そうに見ていたことなど、佳主馬は知る由もなかった。
***
「あの…その…ごめん、ありがとう。助かりました…」
その言葉を聞いた瞬間、今までの動揺も消え去り怒りが湧き上がる。
「…だったら、自分ではっきり断ればいいだろっ」
語尾が強くなってしまったことで小磯健二はいつもの怯えた色を含ませ、小さく肩を震わせた。それがまた無性に苛立つ。
何度か開かれた後、その口元は小さく、ごめん、と弱々しく言葉を零した。それを見て幾分強く言い過ぎたかと思い直すも、既に遅く、本当のことであるため結局何も言えず互いに気まずい空気が流れる。
佳主馬が面倒そうに息を吐いたところで、その空気はある音によって掻き消された。
「…………」
「…………」
狼狽える仕草は先程と変わらないが、小磯健二からは怯えの色は消えた。自分の褐色の肌とは正反対のその白い肌がほんのりと色づいていくのを、佳主馬は興味深げに眺める。
思ったより腹の虫の音が大きかったのか、小磯健二は、あ、う、と言葉にならない音を発し、恥かしそうに目を泳がせた。初めて見るその彼の表情を佳主馬はまじまじと見詰め、自然に口元が緩んでいたことに気付くと誤魔化すように言葉を繋ぐ。
「あ…ぼ、僕…その、帰――」
「俺これから夕食なんだけど、あんたも行く?」
「う…あ、―――え?」
大きく開かれたその瞳を見詰め返しながら、佳主馬は内心で、俺今何て言ったっけ、と自分の言葉を反芻する。とっさに告げた言葉に佳主馬自身が驚き目を丸くするも、相手はそれにも気付かないで、ゆうしょく、と上の空で呟いた。
「あ…えっと…」
「行くの、行かないの」
「うっ、あ、僕は…」
「はっきりしてよ」
煮え切らない態度に、再び佳主馬が苛立ち語気を強めると、小磯健二は慌てて承諾の返事を返してきた。
その後にあからさまに、しまった、という表情を浮かべたが、承諾を得た佳主馬にとっては何故かその態度には腹立たしさは感じられなかった。
つづく
えーと、省きましたがこんな感じで進んでいきます、はい。
えーと、こんな態度の池沢氏ですが、自覚した後(エロ後)には激甘です。ゲロ甘?(苦笑)
もうぐいぐいいっちゃうキングの本領発揮です。
そして侘助、初めて出したんですが…あれで終わりです(笑)
仕事面とかの細かい詳細うんぬんはあまり突っ込まないで読んでいただけると助かります…。自分でもよくわかってません(え)